映画「写真家ソール・ライター」@テアトル梅田

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「一見何も写っていないようで、隅の方で何かが起きているような。」
「後ろから、左耳をくすぐられるような。」
そんな写真が好きだというソールライターを分析にかかるトーマス・リーチ監督。

長田弘さんの詩を思い出す。
  自由とは、どこかへ立ち去ることではない。
  考えぶかくここに生きることが、自由だ。
  樹のように、空と土のあいだで。

ソール・ライターの写真は、とても好き。
何の変哲もなさそうでいて、ヘンコな構図とか
盗み撮りとそうじゃないコトの微妙なさじ加減とか
縦位置が多いトコとか
雨に煙ったような色彩とか。
けど、人となりは全く知らずにいた。
で、どんなカメラを使ってはるのかも。
LUMIX(ルミックス)@パナソニックも使ってはったんやね。

A window covered with raindrops interests me more than a photograph of a famous person.
「有名人より雨粒に覆われた窓を撮る方が楽しいんだ。」
そう言い放ち、ハーパース・バザーやヴォーグなどのファッション雑誌の表紙を
飾る華々しいカメラマン生活から、フツーの人(フツーじゃないと思うけど)として
写真を撮り、絵を描くという日常を送る写真家のドキュメンタリー映画
「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」は、ソラシラナンダな
ことが満載。
心地の良さを求めてシャッターを切ることの快感に溢れている日常は、13小節に
分かれているのがせめてもの抑揚で、大いに感動したり感嘆することもないのに
自分の生涯に寄り添う何かが散りばめられている。
何か・・・。
見終わったあと、監督が伝えたかった何か=somethingについて、じわぁっと思いを
巡らせる。

想田和弘監督の映画に出てくるような感じで、ちらっと登場する猫の存在感ったら。
猫とソールとの寄り添い方が、すっごくいい。
この映画の一番の見所は、飼い猫(レモン)。って思うくらい、ソールにとっての
レモンの存在、レモンにとってのソールの存在、お互いの存在価値や
居場所のありかを監督は巧く映画に盛り込んではるなー。
「撮影の許可はしたけど、映画を作ってもいいとは約束していないよ。」と言いながらも
監督の感性に感じる何かがあったから、ソールは撮影を許したんじゃないかな。

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字幕は、アメリカ文学研究者で翻訳家の柴田”モンキー”元幸さん。
ソールのようなクセのある老芸術家の言葉のニュアンス(微妙な意味や言い回し)を
日本語に置き換えるのは至難の業やったことでしょう。
柴田さんにはモンキー創刊時にお会いする機会があって、その飄々さに打たれてしまった。
「文字数に制限のある字幕作りには苦労した。」とおっしゃっているけど、この素晴らしき
字幕に乾杯。

ソール・ライターが亡くなった妻を話題にした際に「でも彼女は先に死んだ」と
残念そうに言う場面で彼は「kick the bucket」と話す。
それを柴田さんは「死んだ」とは訳さず、そのまま「バケツを蹴った」と訳した。
直後に「意味がわかるかい?」と監督に聞くので、こう訳せば、ソール・ライター独特の
言い回しを使っていることがわかるだけでなく、臨場感も増す。
アメリカ文学に精通している柴田さんならではの訳し方だったのだろう。」
とあって、英語にも米文学にも不案内な私は、ただただ柴田さんを尊敬するばかり。

複雑怪奇な巨匠、ソール・ライター。
2013年、享年89歳。
「人生で大切なことは、何を手に入れるかじゃない。何を捨てるかということだ。」
と言いながらいくつものトキメクもので溢れかえっている部屋。
この矛盾が愛おしい。
" target="_blank">ハーブ&ドロシー」@ニューヨークが住んでいた部屋を思い出す。
こんな風に撮ってみたいとソールの写真集を眺める。
どこまでも遠いところへ歩いて行けそうと確信する。

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「レモン」について>>マーギット・アーブ@ソール・ライター財団

ニューヨークマンハッタンの路上で生まれた野良猫でした。
彼女が1歳位の時、ギャラリーの会計担当の
息子さんが保護し、ソールに飼わないかと
尋ねたら、会いもしないまま 「あぁ、いいよ」と
言ってくれました。

箱に入れられてやってきた時から、彼女は
無愛想な堂々たる態度で彼のアパートを
我が物のようにしていました。最初、ソールは
「エマ」と名付けたのですが、野良猫気質が
抜けずに悪さばかりして、訪問客が座って
ソールと話していると、突然飛びかかったり
するので、遂に名前を「レモン」に変えてしまいました。
(買ったものが壊れていたり、不良品のことを
英語では「レモン」と言うからです)

レモンが一つ得意だったことは、ソールの
カメラの前でポーズをとること。表情豊かな
性格で、ソールのお気に入りの被写体でした。

レモンはソールが住んでいたイーストビレッジの
建物で今も暮らしています。ご近所の友人に
引き取られ、幸せに、健康に、楽しく暮らしています。
夏は新しい家族とハンプトンの別荘にも行きます。

今でもアパートの外階段を使ってソールの部屋の
窓までやって来て中を覗きこんだりしています。
多分、彼女は新しい生活を気に入っているけれど、
ソールと自分の昔の家をまだ覚えているのでしょうね。





テアトルグループの会員やからいつでも割引価格で観られけど、この写真のクリアファイル
欲しさに前売り券を買い、パンフレトも買う。
飽きるまでソール・ライターに酔っていよう。
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by mint_jam | 2016-02-18 23:23 | movie | Trackback

フルーツフルな日々


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