写真集「山羊の肺 沖縄 1968–2005年」から抜粋された写真と1985年創刊の同人誌「美風」の展示。
古本界で高額取引されている美風が揃っている。
無料で見せてもらえるなんて、申し訳ないような気になるほど肝(ちむ)に刺さる。
手刷り装幀(表紙:版画 題字:与那覇定子)&青焼きプリント。
手袋をした手で丁寧に丁寧に1枚づつめくる。
内なる思いに溢れた写真たちから、木版画のような力強さが湧き立つ。
写真も文字も文章も印刷も製本も、そのすべてが沖縄への思い(愛)によるもの。
「娼婦経済」
「美風」の中に「1945年(終戦)以降27年間、アメリカ統治下に置かれていた沖縄の経済は娼婦経済だった」と言い切る文を読み返す。
沖縄家屋が並ぶ通りに咲く日本の国旗。
山羊の肺。
今も基地があることによって暮らしが立っている人がいる。
沖縄の歴史とは、沖縄とは、沖縄人とは・・・。
答えは「美風」(ちゅらかじ)の中。
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The Third Gallery Aya HPより
1948年沖縄県今帰仁村に生まれた平敷の写真との出会いは、沖縄工業高校に入学したことでした。その後、東京写真大学(現、東京工芸大学)工学部に入学するも、学園紛争の為、撮影技術が学べず、東京総合写真専門学校に移りました。そこでも学校が閉鎖され、その期間に沖縄の島々を撮り始めました。
1985年には嘉納辰彦・石川真生らと同人写真誌『美風』を創刊し、自家版の写真集の刊行、写真展の開催を続け、40年に渡る作家活動の集大成として出版したのが『山羊の肺 沖縄 1968–2005年』でした。写真集の巻頭を飾った平敷の言葉「井の中の蛙一天を見つめる。天は全世界とつながっている。つきぬけてゆくと宇宙にもたっする。高校の先生がいった言葉が私の沖縄の写真を撮影していく力になった。基地の中に沖縄があるとよく言われているが、私は沖縄の中に基地があると思いたい。人が住んでいる約四十七の島でなりたっている沖縄を「復帰」前後の時期から撮影したのがこれらの写真である。この写真集を通して、沖縄の歴史とは、沖縄とは、沖縄人とは何かを感じてもらえればと思っている」を反芻しながら、写真を見て頂ければと思います。まとまって見る機会が難しい同人写真誌『美風』全巻も展示致します。