「とうさん」


「とうさん」_c0108673_2339118.jpg
「おとうさんだいすき」シリーズ(ポプラ社)の第4巻目として
とうさん」が出版されました。
文は内田麟太郎さん。
絵はつよしゆうこさんです。

「とうさん」は、内田さんの本当のおとうさん。
主人公の男の子は、おとうさんが再婚した相手(内田さんの義理の母)の実息子で
内田さんの義弟がモデルです。

ある夏の数週間。
男の子が新しいおとうさんのことを「とうさん」と呼べるようになるまでの親子の
心の機微が描かれています。

もうすぐ70歳になる内田さん。
義母にいじめられていた幼少の頃のことを「おもいで」という絵本にしたのに続いて
(絵は中野真典さん イーストプレス刊)
おとうさんのことを書こうと思ったのは
自分は義母にいじめられていたけれど義弟と父はどういう関係だったのだろう。
と考えたからだそうです。

最近になってこの絵本の主人公になった弟さんが
「ぼくが一番とうさんに愛されていたと思う。」と言ったことがとても嬉しかった。と
内田さんは作者の欄に書いていています。

必ずしも絵本がほんわかしていなければいけないとは思わないけれど
内田さんが絵本・童話界の巨匠だということを差し引いても
こんなシリアスな話が絵本として出版されるんや!と、びっくりしました。

絵は出版社に一任ということで、つよぴにはポプラ社から依頼があったそうです。
緑や水面、野花・・・男の子とおとうさんが釣りをしている絵は
つよぴの真骨頂!!

だけどそれより強く惹かれたのは文をそのまま現していない
男の子が寝そべっているそばに猫がいて
青や赤紫や紫の朝顔が手前にデフォルメされた絵でした。

朝顔は低学年の夏休みを象徴していて
鮮やかな色はそれだけで十分に印象的なのだけれど
毎日開いては閉じる朝顔の花の動きが
親子が親子になりかけ始めた頃の心の揺れ
「とうさん」と心の中では呼んでいるけど、まだ「おじさん」としか声に出せないでいる
男の子のシーソーのような気持ちと重なっているように思えて
何度も見入ってしましました。

映画が俳優や演出で印象が変わるように
絵本は絵によって随分印象が変わるものです。
素晴らしい仕事をした、つよぴに拍手♪
by mint_jam | 2010-05-14 23:41 | book | Trackback

フルーツフルな日々。旅人だったり、レコガールだったり、オリーブ少女だったり。 美味しい食べ物と麻薬性の高い音楽にうずもれて、気持ちが動くままに写真を撮っていると幸せです。 日常や日常じゃないどこか。座右の銘は一食入魂。photo&essay:宮本ミント


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